誹謗中傷や悪口を書かれる前に押さえておきたい名誉毀損の基本

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スモールビジネス事業主にとって、自分の事業に関するネット上での口コミは非常に有用ですが、中には削除を求めたくなる辛口・悪口レビューもあります。 どういう誹謗中傷や悪評なら削除を求められるのか、そして、それを誰にどう求めるべきなのか。実際に書き込みを行われる前に予習しておきましょう。


ネット上での誹謗中傷や悪評を削除して貰うには?

現代では、製品製造や販売を行う会社からラーメン屋まで、どんな事業を行うにせよ、ネット上での評判は超重要です。良い評価をして貰えれば顧客は一気に増えるけど、逆に、匿名掲示板に製品の悪口を書かれたり、飲食店レビューサイトに悪評を書かれたりしたら、集客にとって大きなマイナスになってしまいます。

誹謗中傷

ネット上の書き込みは永遠に残るため、「変な書き込みがあるせいで新規客を開拓し辛くなり、経営が苦しくなる......」なんてことになりかねません。しかし、削除を求める権利がない場面で「削除しろ!」と求めてしまうと、かえって火に油を注ぐ危険もあります。

誹謗中傷や悪評を書き込まれてしまった場合、まず、「どういう誹謗中傷や悪評なら削除を求められるのか」が問題で、次に、「それを誰にどう求めるべきなのか」が問題になります。会社や店などの評判を守るため、どのように考え、どのように行動したら良いのか。判断基準や行動指針について解説します。

「正当なレビュー」と「名誉毀損」の違いとは?

まず断っておきたいことは、自分にとって不都合な書き込みだとしても、常に削除を求められるとは限らない......ということです。

書き込み削除を求める理屈はいくつかあり得ますが、使う場面が多いのは「名誉毀損」です。そして、「ある書き込みが名誉毀損にあたるか」を考える上では、「事実」と「評価」の区別が重要です。例えば、

「この店のラーメンは麺が50グラムしかない、すぐ食べ終わってしまって物足りない。」

という書き込みであれば

「この店のラーメンは麺が50グラムしかない」 この部分は、真偽はともかく「事実」です。ここに問題があると考えるなら、下記で「事実が名誉毀損にあたるか」を考えることになります。
「すぐ食べ終わってしまって物足りない」 これは書いた人の感想であり、「評価」です。この部分に問題があると考えるなら、下記で「評価が名誉毀損にあたるか」を考えることになります。

という区別です。

事実の指摘は嘘なら原則的に名誉毀損

名誉毀損が問題となるのは、人の社会的評価を低下させるような事実を指摘した場合です。そして、その事実の内容が真実でない場合、通常は名誉毀損が成立します。もし、「ゴキブリが入っている」と嘘を書かれた場合は名誉毀損です。

また、内容が真実であっても、内容の公共性と目的の公益性がない場合も名誉毀損となります。「あの店の店員は不倫している」なんて飲食店の営業に関係のない書き込みはこれにあたるでしょう。

つまり、以下のような判断枠組みです。

社会的評価を低下させる 真実でない 名誉毀損
真実である 内容の公共性か目的の公益性がない
内容の公共性と目的の公益性がある 名誉毀損ではない
社会的評価を低下させない

名誉毀損に該当する場合には、後述の方法で削除を求めることができます。

評価は原則的に名誉毀損ではない

評価が名誉毀損にあたる場合は、実はかなり限定されています。
単なる意見や評価が名誉毀損と認められるのは、人身攻撃に及ぶなど、意見や論評としての域を逸脱したものだけ。過去の裁判では、女子プロレスの経営などについて「ストリップと紙一重」などと論評した、かなり言葉遣いがひどい事例であっても、名誉毀損の成立は否定されています。「まずい」とか「ださい」といった個人の意見では、名誉毀損には該当しないと考えられるでしょう。

評価によって事実も明らかになる場合

もっとも、意見や論評の中には、それによって事実も明らかになる場合もあります。例えば、プログラムを盗用されたと考えた人が、相手を「プログラムドロボー」と評価した場合について考えてみましょう。この「ドロボー」というのは「評価」ですが、しかし、その表現によって読み手には「プログラムの著作権を侵害した」という事実も伝わります。

つまり、

(「相手はプログラムの著作権を侵害した」) 明示的には書かれていないが、黙示的に主張されている。 事実。上記通り、嘘なら原則的に名誉毀損です。
「プログラムドロボー」 明示的に主張されている。 評価。上記通り、原則的に名誉毀損は成立しません。

の両方を主張したのと同じ、ということ。「明示的に事実を書いたわけではないけど、しかし黙示的に事実も主張している」ということです。

名誉毀損以外にも手段はある

「名誉毀損」の他にも、「信用毀損」や「偽計業務妨害」などの手段もありえます。
「信用毀損」は人や会社の経済的な面に関する社会的な信頼を保護するもの。ここには販売される商品の品質に対する信頼も含まれます。したがって、主に店の営業に関する誹謗中傷の場合に問題となります。

そして、「偽計業務妨害」は、虚偽の噂を流すことなどによって業務を妨害した場合に成立するもの。誹謗中傷の対象が店員の個人的なことであっても営業に関することであっても、業務の妨害になるような誹謗中傷であれば対象です。

これらの違法行為は、それぞれが保護する領域が重なり合うものです。だから、「この書き込みは名誉毀損と信用毀損のどちらだろう?」などと悩む必要は必ずしもありません。いずれにせよ、どれかにあたれば違法行為であり、削除要請は可能です。

違法行為の場合、どうすれば削除して貰えるのか

名誉毀損や信用毀損などに該当する場合、まずは、実際に書き込みを行った人に「名誉毀損に該当するので削除して下さい」と言うのが本筋です。しかし、匿名掲示板だと誰が書き込んだのか分からないし、ブログなど書いた人を特定できる場合でも、相手が無視するケースが多いのが現実です。

そこで、サービス提供者に削除要請を行うことが考えられます。掲示板などのウェブサービスならサービス運営者、ブログならブログサービスの運営者、レンタルサーバー上のサイトならサーバー運営者です。

どちらの場合も同様に、「名誉毀損に該当するので削除して下さい」と言いましょう。

サービス提供者も必ずしも削除してくれるとは限りませんが、しかし、名誉毀損は違法行為です。最終手段として、裁判所に訴えるという法的措置に出ることもできます。弁護士に相談して、まずは弁護士から再度削除要請をしてもらい、それでもダメなら訴えるという選択肢も、最終的には検討する必要があるでしょう。

弁護士 河瀬 季かわせ とき

河瀬季

コスモポリタン法律事務所(東京・音羽)所属。東京大学法科大学院卒業。起業支援など企業法務を得意としており、中小企業などのスモールビジネス事業主に対する、資金調達や労働問題などを含む各種の法務アドバイスなどを行っている。また、エンジニアやテック系ライター、ITベンチャー執行役員の経験がある元IT関連フリーランス・理系出身者であり、特許法などの知的財産法や、電子商取引・ドメインを巡る紛争など、IT法にも強い。個人サイトは「tokikawase.info」、Twitterは@tokikawase

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