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2020年から青色申告特別控除65万円が見直しに!個人事業主は減税になるの?【平成30年度税制改正】

65万円または10万円の2種類だった青色申告特別控除。平成30年(2018年)度の税制改正で、2020年分以後の個人事業主の青色申告では、55万円または10万円が基本となり、一定条件を満たした方のみ65万円の控除が受けられるようになります。
基礎控除額は原則10万円増額となり、一見、個人事業主に有利な改正に見えますが、減税メリットを受けられない方もいますのでご注意ください。平成30年(2018年)度の税制改正で個人事業主やフリーランスが影響を受ける部分を中心にご説明します。

POINT
  • 青色申告特別控除が2種類から3種類に
  • 65万円控除のための要件が追加に
  • 基礎控除増額のメリットが受けられない人も

2種類から3種類になる青色申告特別控除

平成30年度の税制改正は、個人事業主にとってインパクトのある改正となりました。
青色申告特別控除額が2種類から3種類となることや、基礎控除額の引き上げなど、一見個人事業主に有利な改正に見えますが、本当にそうなのか、詳しく検証していきましょう。

一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しく期限内申告している人が、原則としてその年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出すれば、青色申告者としてさまざまな特典を受けることができます。そのひとつが、青色申告特別控除です。

これまでの青色申告特別控除は、

  • 不動産所得または事業所得のある青色申告者で、これらの所得にかかる取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付して法定申告期限内に提出している場合には、原則としてこれらの所得を通じて最高65万円
  • それ以外の青色申告者については、不動産所得、事業所得及び山林所得を通じて最高10万円が控除できるもの

とされてきました。

つまり、得ている所得の種類や記帳のレベルによって最高65万円または最高10万円の2種類の青色申告特別控除があったわけですが、平成30年度の税制改正で65万円、55万円、10万円の3種類に分かれることが決まりました。2020年分以後の所得税および2021年度分以後の個人住民税から適用されます。

改正のポイントは、これまで65万円の控除を受けていた方のなかで、プラスアルファの要件を満たしていない方については、控除の最高額が65万円から55万円になる、ということです。これまで10万円の控除を受けていた方が55万円控除を受けられるわけではありませんのでご注意ください。

65万円の特別控除を受けるための要件

そうなると「どうすればこれまでどおり65万円の控除を受けることができるのか」という点が気になります。
これまで65万円の控除を受けることができた方のなかで、次のいずれかの要件を満たした方については、従来どおり最高65万円の青色申告特別控除が受けられます。

(1)電磁的記録の備付けおよび保存をしている場合

その年分の事業にかかる仕訳帳および総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律に定めるところにより電磁的記録の備付けおよび保存を行っていること。

(2)e-Taxにより電子申告をしている場合

その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うこと。

つまり、2020年分以降の個人の確定申告において、電磁的記録の保存等をしておらず、紙ベースで申告をしている方は青色申告特別控除の上限額が55万円に減額になるため、注意が必要です。

まず(1)についてもう少し詳しく説明すると、電磁的記録等の保存等は、あらかじめ税務署長等の承認を受け、かつ、適正公平な課税の確保に必要な一定の要件に従った形であることが求められます。

というのも、国税関係帳簿書類(元帳や注文書、領収書等)の保存は、申告納税制度の基礎をなすものと考えられており、原則として紙ベースで保存することとされています。これを電磁的記録で行なう場合は、相応の要件を満たしている必要があるわけです。

税務署長等の承認を受けることなく、市販の会計ソフト等を使用して、紙による保存等に代えて電磁的記録等による保存等を行うことは認められませんので、「パソコンで帳簿を管理しているから電磁的記録の備付け要件を満たしている」と考えるのは早計です。

なお、承認申請には承認を受けようとする国税関係帳簿の備付けを開始する日の3月前までに承認申請書を提出する必要があります。意外と時間がかかるので、こちらも注意が必要です。

【参考記事】
・電子帳簿保存法とは?電子データ保存とスキャナ保存の違い、申請方法を税理士が徹底解説!

(2)については、電子申告をしていれば引き続き最高65万円の控除を受けることができる、ということです。国税庁発表の平成28年度のe-Taxの利用状況によると、所得税申告では53.5%の方が電子申告を行っているということがわかりました。所得税申告者の半数以上がe-Taxを使っているということですから、電子申告は電磁的記録等の保存に比べると利用しやすい制度かもしれません

ただし、e-Taxを利用するためには、原則として電子証明書が組み込まれているマイナンバーカード等が必要となります。マイナンバーカード等が交付されるまでには、申請してから少し時間がかかるので、電子申告をお考えの方は早めにマイナンバーカード等の交付を受けるようにしてください。

また、マイナンバーカード等に対応したICカードリーダライタなどの準備も必要となるなど、事前準備に手間と時間がかかるので、早い段階から準備しておくことをオススメいたします。

現在、平成31年1月からの、e-Tax利用の簡便化に向けて準備が進んでいます。
これにより、マイナンバーカードを用いてマイナポータル経由またはe-Taxホームページなどからe-Taxへログインするだけで、簡易な設定でe-Taxが利用できるようになる(マイナンバーカード式)予定です。これまで必要だった開始届出書の提出と、ID・パスワードの取得が不要となるため、利便性が高まりそうです。

また、マイナンバーカードおよびICカードリーダライタを持っていない方については、厳格な本人確認に基づき税務署長が通知したe-Tax用のID・パスワードによる電子申告(ID・パスワード方式)も可能になる予定です(ただし、ID・パスワード方式は暫定的な対応で、導入後おおむね3年をめどに見直される予定)。事前にOS、ブラウザ等の推奨環境の確認もお忘れなく!

所得が高くなるほど税負担は重く

今回の税制改正では、2020年より基礎控除がこれまでの38万円から原則として48万円に引き上げられることも盛り込まれました。

そうなると「電子申告等さえしていれば、個人事業主は全員、減税になるのでは?」と思われるかもしれませんが、基礎控除額の改正には注意すべき点があります。

これまでは所得金額に関係なく一律38万円だった基礎控除が、合計所得金額が2,400万円を超える個人については、その合計所得金額に応じて控除額が逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用がなくなります。

基礎控除と合計所得金額

合計所得金額
2,400万円以下
合計所得金額
2,400万円超
2,450万円以下
合計所得金額
2,450万円超
2,500万円以下
合計所得金額
2,500万円超
これまで 一律38万円
改正後 48万円 32万円 16万円 0円

合計所得金額が2,400万円以下の個人事業主は、基礎控除額の引き上げがそのまま所得控除額の減額になります。平成28年分申告所得税標本調査によると、ほとんどの個人事業主が基礎控除額引き上げの恩恵を受けることができる、と推測されます。

よって、前述の青色申告特別控除と合わせると以下のようになります。

現行 2020年分以後の確定申告 基礎控除(※) 影響
白色申告の場合 白色申告 10万円引上げ↑ 【減税】
10万円 所得控除額が増えます
青色申告10万円控除の場合 青色申告10万円控除 10万円引上げ↑ 【減税】
10万円 所得控除額が増えます
青色申告65万円の場合 書面で提出 55万円控除(10万円引下げ↓) 10万円引上げ↑ 【変わらず】
所得控除額は変わりません
電磁的記録の備付けおよ及び保存もしくは、e-Taxで申告 65万円控除 10万円引上げ↑ 【減税】
10万円 所得控除額が増えます

(※)合計所得金額が2,400万円以下の場合

基礎控除増額のメリットを受けられないことも

合計所得金額が2,400万円以下の個人事業主であっても、基礎控除額増額のメリットを受けにくい方がいます。それは、会社員やアルバイト等を兼業し給与所得を得ている個人事業主の方などです。

実は今回の改正において、基礎控除を10万円引き上げることは、同時に「給与所得控除・公的年金等控除を10万円引き下げる」ことと繋がっています。

どういうことなのかをざっくり言うと、給与所得控除等を受けている個人事業主にとっては、

給与所得控除等の金額が10万円下がる→給与所得金額が10万円上がる→事業所得等と給与所得等の金額の合計が10万円上がる→基礎控除額が10万円上がる

以上をトータルすると、結果的にプラスマイナスゼロとなり、基礎控除増額のメリットが受けられなくなります。

基礎控除 給与所得控除等の金額 影響
事業所得のみ
※合計所得金額2,400万円以下の場合
10万引上げ↑ 【減税】
給与所得のみ 10万円引上げ↑ 10万円引下げ↓ 【変わらず】
(※)
事業所得+給与所得 10万引上げ↑ 10万円引下げ↓ 【変わらず】
(※)

(※)給与所得の金額によっては、増税となることもあります。

また、今回の給与所得控除額に関する改正では、給与(年収)が高くなるほど増税になるしくみになっているため、給与所得の高い個人事業主は単純に増税になる可能性もあります。この部分は、後日の平成30年度税制改正に関する別記事で詳しくご説明いたします。

青色申告特別控除や基礎控除の改正は、個人事業主には減税のメリットがある、といわれていますが、会社員等と兼業されている方の場合は必ず減税になるわけではありませんのでご注意ください。

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photo:Getty Images

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