パート・アルバイトが集まらない!中小企業診断士が教える「効果的な人材募集の方法」とは?

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執筆者:粕谷智和(中小企業診断士)

パート・アルバイトが集まらない! 中小企業診断士が教える「効果的な人材募集の方法」とは?

今、どこもかしこも人手不足の状況が続いております。たとえ会社の業績が順調でも、マンパワーが足りなければ事業の拡大はおぼつきません。求人募集も「広告」の一類型であり、募集側のアピールと、応募者側のニーズとのバランスが重要です。

今回は、「プロモーション」の観点から、中小企業や小規模事業でのパート・アルバイトの効果的な人材募集について考えてみたいと思います。


POINT
  • 中小企業の募集の基本は「身近な人からの紹介」
  • パート・アルバイトのニーズを踏まえよう
  • 「あなたの会社を選ぶ理由」をどれだけ応募者に与えられますか?

中小企業の人材募集は「身近な人からの紹介」が基本

中小企業と大手企業との人材募集の違いを見た時に、大手企業は求人広告や求人サイトで大掛かりに広告を打って不特定多数の人材を募るのが一般的です。一方、中小企業は家族経営が多く、親類縁者や友人といった、経営者と比較的近い存在の人材が集まりやすい傾向があります。

大手企業とのポジショニングを分ける=競争を避ける という意味でも、中小企業においてパート・アルバイトを集めようと思えば、まずは経営者に近い親類縁者、友人のつてを当たりましょう。実際のところ、不特定多数の募集よりも、それが一番無難でありお金もかかりません。まわりに誰かいないか、まずは幅広く打診してみましょう。

この場合のメリットとして、

① 親類縁者、友人知人が間に入ることで、自社および募集人材についてお互いの信用担保や情報共有がすでになされているので、求める人材能力との乖離やミスマッチが比較的起こりにくい 
② 事前に信用担保や情報共有がされていることで、面接や採用のプロセスで起こりがちな就職辞退のリスクや、早期退職のリスクが比較的少ない 
③ 募集コストが低い 

などが挙げられます。

ただし、この状況が上手くいくには、自社の待遇や人事制度が人にスラスラと説明できるくらい明確であることが重要です。さらに言えば、「人に紹介したくなる企業風土」を従業員に提供できていることが前提です。

待遇や休日の規定が不明確で、経営者一存の「どんぶり管理」では、紹介する側からすればそれは「人に紹介しづらい会社」です。人材募集を考えるくらいの企業規模になった際には、待遇や休日などの人事制度、自社の働きやすい雰囲気づくりなど、組織としての人事体制を早い段階で整備しておきましょう。そうすることで、のちの事業拡大もスムースにいきます。

パート・アルバイトが求める必須情報

紹介だけで集まる人材に限界があれば、いよいよ不特定多数の方への求人告知となります。その際は、あらためてパート・アルバイトのニーズを踏まえましょう。パート・アルバイトが求める必須情報とは、

① 時給などの給与待遇
② 休日・シフトの柔軟性
③ 仕事に必要なスキルについて  

このあたりに集約されます。

① 時給など給与待遇の考え方

パート・アルバイトの募集を考えた際、正社員と違い「夢を実現する」といった自己実現系のニーズよりも、ダイレクトにお金の多寡が応募モチベーションに繋がる傾向があります。

どの業態の企業においても、昨今の人材が不足していると悩みの声を聞きます。すでにニュース等でも頻繁に報道されていますが、今は完全に「売り手市場=応募者有利」の市場傾向なのです。こうした状況においては、パート・アルバイトの採用について正社員と比べて「コストを安く済ませたい」という発想のままでは、もはや人材が集まりづらいのです。ここは腹をくくって、競合他社よりも「高時給」で募集をするという判断も視野に入れるべきです。

時給が競合と比べて変わらない、ないしは低くしたままで漫然と募集広告を続けては、結果的には広告コストが嵩みますし、「いつも広告を出していて、よっぽど人気がないのだな」という印象にもつながります。

また慢性的な人材不足によって企業自体が疲弊し、従業員の疲弊に伴うミスの増加や、さらにそれに伴うクレームの増大といった潜在コストを高めてしまう恐れもあります。それでは本末転倒なのです。市場傾向を踏まえた「高時給」を設定することで、短期間で人材が集まりやすくなり、結果的に広告コストや潜在コストを抑えるメリットにつながります。

また、「高時給」で募集することで、集まる人材のスキルも高まる傾向があります。実際は面接等での感触を探ることになりますが、優秀な人材を求めるのであれば「高時給」であることが前提となることは想像しやすいところだと思います。

実際には、現在の事業とのコスト配分とのバランスを鑑みながらになるとは思いますが、過去の私の経験(筆者が在籍していた某企業では、あえて高時給でパート・アルバイトを集めることを制度化していました)でも、高時給で人材募集することで優秀な方がすぐに集まり、結果として店舗を支えてくれる貴重な人材として活躍してくれたことが大部分でした。

休日・シフトの柔軟性について

特にパートには、いわゆる「扶養の壁」と呼ばれる応募者側のニーズがあります。働く時間・収入に制限を持たせたいパート・アルバイトが多いようです。

こちらとしては業務の繁閑に応じて柔軟に働いて欲しいところですが、年収103万円以下(税金上の扶養判定、一部106万円未満等。例外有)や年収130万円未満(社会保険上の扶養判定)で働きたい方々がいるのは確かです(個々の判定金額については年々の制度変更も伴いますので注意が必要です)。

この部分への配慮(働く時間のパターンを数多く提示し、そのなかから選べるようになっている。シフトには柔軟に対応できる。休日の希望に応じる等の表現)を募集条件に明示することで、応募者側からすると応募しやすさが上がってきます。

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仕事に必要なスキル

時給や働く時間などは具体的な「数字」で目安を示すことができますが、仕事に必要なスキルは「言葉」で伝えていく領域になります。ここで大事なのは、具体的に何をするのかを明示することです。応募者側からすると、「この仕事は私でもできるのか?」ということを常に念頭に置いているものです。

こうした疑問に対して、仕事の中身が具体的に明示してあればあるほど応募しやすくなります。どんな仕事をやってほしいかについて明示するのは当たり前の話のように感じるかもしれません。ですが意外と見落としてしまいがちな部分でもありますので、ここで列挙しておきましょう。

特に以下のような部分に関して、応募者は不安や疑問を感じていることが多いです。

☆体力的にできるのか(高齢化を踏まえて、目安となる表現を入れておく。例:1日の歩数、屋外等での作業目安など)

☆知識的・スキル的にできるのか(特に事務PC作業ではWord、Excelなどのソフトだけに留まらず、ソフトを使ってどの程度のことをするのかを明示することが大事です。簡単な表計算等の表現ではわかりません。例:単純な数字打ち込み、sumを使った表計算程度、 Wordを使ったお便り作り等)

☆必要資格(普通免許・大型免許・簿記......といったもの)

実際にする仕事に必要となるスキルの中身は、できるだけ細かく明示しましょう。

他社ではなく、あなたの会社に応募したいと思う理由を、応募者の方にどれだけ与えられますか?

前述の①~③の部分は、求人募集を考えた際には告知・掲載することが必須条項であり、実は他社との差別化はしづらい部類に入ります。

時給を高くすることは、それはそのままアイキャッチとなり、さらには他社との差別化になるように一瞬見えますが、実は遅かれ早かれ同業他社との競争になり得る部分。決定的な差別化の要素にはなりません。継続的な努力が必要です。

求人応募者の情報ニーズイメージ

求人応募者の情報ニーズイメージ

前述の①~③に関しては、上図の赤丸部分となり、求人募集で必ず提示する情報、コア部分です。ここに【働きやすさ】についてさらに述べてあれば人材募集として及第点になりますし、【働きやすさ】の【裏付け】の情報発信まで行ければ、いよいよ求職をしている人の情報ニーズを満たしてきます。

ここでいう【働きやすさ】とは、どんなことでしょうか? 狭義で言えば、託児所完備や、制服支給といった福利厚生の側面や職場の雰囲気等の紹介です。こういった情報は言葉だけでなく、写真などのビジュアルを添えて「イメージしてもらう」ことで効果を上げます。広義で言えば、業績の良さ(安定性)や、自社の製品・サービスが好評を頂いている実例(お客様の声など)=人から選ばれている感(人気性)などの紹介も【働きやすさ】をイメージさせます。こういった情報は、積極的に入れていくべきところでしょう。

ただ、私がさまざまな求人募集の広告を見ていて思うのは、求人に力を入れている会社でも、【働きやすさ】の言及までにとどまっている企業がほとんどだなあ、ということなのです。

おそらくは広告コストの都合で掲載面積に制限があり、多くの情報を発信できないなどの理由なのかもしれませんが、実際のところ【働きやすさ】の言及だけでは「他社との差別化が足りない」ように感じるのです。

その会社の【働きやすさ】まで告知できていれば、親切な求人広告のように見えますが、ここをむやみに飾ったものも多いようです。よくある傾向として「ブラック」と噂される企業が、会社の紹介などの文面に美辞麗句を並べたてている広告を、今でも頻繁に見かけます。

私も20代の頃、そんな美辞麗句に誘われて、入社した早々、大変嫌な思いをしてすぐに辞めた経験があります。このような求人広告のパターンは、実は応募者にとって食傷ぎみになっており、「本当にそうなの?」「大げさな表現じゃないのか?」と感じさせてしまいます。本当の意味で応募者の不安の払しょくにまでには完全に至らないのです。

そこであらためて重視してほしいのは、【働きやすさ】の【裏付け】となる情報です。

求人についての情報発信は、ともすれば企業にとって都合の良い情報の羅列に陥りがちです。そこで、発信している情報が本当であり、確かであるということまで応募者に伝えるアプローチを考えるべきです。

ここで言う「裏付け」とは、実際の従業員の声(写真入りならなお可)、業績的なものであれば「数字」による明示、従業員や顧客満足度アンケート結果やアンケート実物の写真など、「数字」や「写真」等を用いることで、よりリアルな情報として応募者に理解してもらえるのです。

各項目のポイント

これらの情報を求人媒体にぜひ載せてください!と言いたいところですが、実際のところ、募集広告等に上記のような内容をすべて掲載するのは広告の面積の問題など物理的な限界が出てくると思います。

そういった際は求人記事にQRコードやリンクを載せるなどして、自社サイトに誘導して求人特設ページを設置し、自社の【働きやすさ】や【裏付け】の情報を重点的に盛り込むようにしましょう。

こうすることで、応募者が欲しい情報を補完することができます。また、1つの募集媒体にこだわるのではなく、紙媒体では必須項目や一部の働きやすさの表現に留め、裏付け部分や自社の業績などの表現は自社のホームページやモバイルサイトに誘導して補完するなど、発信媒体を2重3重に絡めさせていくのです。

募集広告以外の情報補完の工夫の一例

・自社ホームページへの誘導(自社の求人特設ページで「働きやすさ」「裏付け」を) ・QRコードを掲載して、自社の掲載記事や広告ページなどへ誘導 ・Youtubeなどの動画サイトで自社の特徴を紹介 ・自社工場への見学自由など、実際の就業前に就業のイメージをできるようにする

• こちらの記事「中小企業診断士が本音で解説!個人事業主・起業したての経営者がもっと営業上手になるための「10のコツ」」や、「人気店になるための販売促進のコツ」でもご説明させていただきましたが、人は「儲かっているところに集まり」、「人が選んでいるものを、人は選ぶ」傾向というがあります。

時給や勤務時間などの労働条件は、そもそも募集している企業に対する興味を持つ最初のきかっけとなりますが、その後に応募者がどんなことを知りたいのか、イメージしておく必要があります。

応募者は「自分が応募して本当にその仕事ができるのか」「その企業が言っていることは確かなのか」を知りたいのです。さらに最終的には他社よりもあなたの企業を選ぶための「理由」がどれだけあるのかを、他の求人募集と天秤にかけているのです。

  • 時給が他と比べて高いから
  • 育児の合間に参加できる時間条件だったから 
  • 休日の都合がつけやすいから
  • 自分のスキルでもできそうだと思ったから
  • 託児所もついてるから
  • 社内の写真の雰囲気が楽しそうだったから
  • 業績が良くて安定しているから
  • 実際の従業員の声が掲載されており、情報に信頼性を感じたから
  • 以前、客として利用して良かったから  ...etc.

あなたの会社を選ぶ「理由」を、どれだけ多く応募者の頭に描かせることができるかが、他社との募集の勝敗の分かれ目になります。広告媒体や自社のホームページなどともミックスさせながら、いかに「働きたくなる理由」を明示し、「情報として信頼性がある」と感じさせることを常に念頭において人材募集に取り組んでいただければと思います。

求人広告は法令に則った表現を

求人広告は掲載内容について完全に自由な表現発信はできませんので注意が必要です。表現上において法的なルールに沿うことが大事になりますので、法令等に則った表現や最低限度の明示事項などについては一度ネット等で調べてみたり、社会保険労務士などの専門家、労働管轄の専門機関窓口等でご確認ください。

【参考】
厚生労働省:公正な採用選考について
厚生労働省:採用選考自主点検資料

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photo:Getty Images

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この記事の執筆者

粕谷智和(中小企業診断士)
粕谷智和(中小企業診断士)

中小企業診断士、宅地建物取引士。2001年大手衣料量販グループ入社、入社1年で店長に。店舗オペレーションに通じ、マニュアル改善においては全社表彰を3度受賞。2009年より北海道音楽企業に入社。エリア統括として、エリア内支店経常利益昨年対比800%増を実現。2014年独立。創業、補助金・助成金申請、各種経営計画策定、特に各地セミナーにおける販売促進指導や、個々の事業者様の強み・セールスポイントを引き出し、外部発信していくことを得意としている。一般事業者様向けのセミナーはもちろんのこと、地域経営支援団体・経営相談員様向けの指導セミナーも開催している。

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